ワニの捕食記

危険です

ネタバレ注意

つくづく読み手を嫌な気持ちにさせる小説だ、と思った。

先生は自分の気持ちの矛盾やゆがみ に振り回され、友人を殺したという罪悪感に一生悩み続ける。

Kは孤独が故に、厳格すぎる自身の理念に縛られ、一生苦み続ける。

どちらもジレンマに苦しめられていると感じたし、それの描写は彼らの人生にだけでなく、場面のいたる所で入れられている。

例えば、Kと お嬢さんと 先生とでかるたをするシーン。元はといえば先生がKをお嬢さんと関わらせようとしたのに、このシーンでは先生がKに対して激しい嫉妬をする様が描かれている。

私はこれを読んで、不快な気持ちになったのと同時に共感もした。人の心とは移りやすく、自分の道をつき通すためならどこまでも醜く、残酷になれるのだと実感した。

しかしながら人というのはあくまで理性的な動物であるからして、そうあろうとする意思が他の人より強い先生とKは、その矛盾に悩まされ矛盾に殺されたのだ。

人間の心は罪深いものであるということを      ここまで極端に書かれると、不快な気持ちにもなるものである。

この小説を読んでいると私も彼らの陰気臭さに引張られそうになった。

人の心というものはうつろいやすく、時にそれは人を殺すかもしれない。という漱石の忠告としてこの小説を受け取ろうと思う。