ワニの捕食記

危険です

海辺のカフカという小説

作家である村上春樹が書いた本だ。

家に同じ作者が書いたノルウェーの森という小説があり、それをぺらぺらと読んでみるとびっくりするほど面白くなかった。という思い出があり、自分には合わない作者かもなと思っていた。

しかし彼が書いた本の中には全世界で読まれている本もあるし、色々な賞を取っている。

そんな有名な作家の本を読んでいないのはどうなのか、と思い「海辺のカフカ」を読むことにした。数ある彼の作品の中でなぜこれを選んだのかは思い出せない。

不思議と、これは読めた。

ノルウェーの森より長いのに。

何故か。

まず、主人公が私と同じか少し下くらいの年齢だったこと。

次に、親から離れて旅をするというロマンのあるストーリーだったこと。

そして、沢山の個性豊かなキャラクターが登場すること。

これらの要素から読むのが止まらなくなった。

暗喩がふんだんに使われ、読んでいてとても新鮮だった。暗号を解いていく要領でページを捲っていくと、止まらなくなった。これが村上春樹村上春樹たらしめているのかと感じた。

まあまあな反抗期に読んだものだから、親に対する嫌悪感とか未熟な主人公の心情に自己投影した。冒頭、高速バスで移動するところから始まるのだが本当に自分もそのバスに乗っている気分で読んでいた。

ので、高速バスに乗ると必ずと言っていいほどこの小説を思い出す。

読み終わると、理由がわからない涙が止まらなくなった。これはただの私の解釈だが、この上下巻にわたる長編小説は私ぐらいの年代の青少年の指南書なのではないかと思う。

人は死ぬし、主人公も失ったものは多かった。明るい小説とは言えないけれど、だからといって暗い小説とは思えない。

しかしみんなが主人公を見守っていて、最終的に主人公が精神的に大人になっていることから成長への温かい眼差しを感じられて、前向きになろうと思える作品だった。

小説というのは、読んだ人だけ解釈があるものだ。特にこの本は暗喩だらけなので、もっと解釈が分かれると思う。

だから勝手に若者へのエールを送る作品だとして受け取るし、勝手にこの本で勇気づけさせてもらおうと思う。